ユゴーの「レ・ミゼラブル」に見るパリの街
ユゴーのこの作品には、パリの街が詳細に描写されている。夜の街、昼の街、早朝の街。
そして、ほとんどの人が生涯一度も見あることはあるまいと思われるもう一つの街、下水道についても、大変リアルに描かれていて、臭気や手触りが感じられるようである。
この下水道については、何年に手を入れた箇所であるとか、その後、苦労の末に衛生面が改良されたとか、小説の本筋からはおおよそ外れているように感じられるところに頁がさかれているが、だからこそ、全く別の時代、別の文化に生きているわれわれにも、主人公のおかれた状況が真に迫ったものに感じられる。
ところで、われわれは、地下が地上とどのように繋がっているかということは、日ごろは特別に意識せずに暮らしている。せいぜい、目的地のどこどこに行くには、地下道から地上に続くどこの階段を出ると一番近いのだということを知っているくらいで、歩き出した途端、道の下に地下道があるなどということは、これっぽっちも考えていない。
しかし、地下のインフラは確かに存在し、3.11でもおわかりのように、ひとたび災害が起こればその存在を露わにする。われわれの救世主になるか恐怖になるかはその時次第だ。ジャン・バルジャンのように憲兵から逃れるということではなく、天災から生き延びるために、いつも通る地下街や地下鉄の存在を意識しておく必要があるかもしれない。
ときに、老朽化した下水管が腐って、繁華街の道路が陥没する例もあるらしい。自治体はバブル期に建てられた箱物にばかり目を奪われることなく、地下にも注意を向けなければならない。
ところで、レ・ミゼラブルは、児童書で読んだことがある方や、ミュージカルでお馴染みの方も多いと思う。佐藤朔氏が訳した日本語は大変味があり読みやすいので、ぜひ、大人の読み物として手に取ることをお勧めする。児童書やミュージカルでは描ききれなかった奥深い味を、ぜひ、お楽しみいただきたい。全5巻を下に紹介する。

